【コラム】どこの修理方法?

こんにちは。代表講師の髙倉です。

一つ前のコラムで、当校の製作方法がどのような由来を持つものか簡単に触れてみました。

イタリアの楽器、ドイツの楽器というような言い方が一般的にもよく聞かれることから、出てきた質問にお答えした形ですが、それでは修理の方法はどうでしょうか。

修理や修復の技術は、比較的経済的に豊かな国で発達してきた傾向があります。

例えば、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどなどで発達してきました。

そうなのです、実は日本にはトップレベルの腕をもった修理・修復師の方が何人もいます。これは日本人手先の器用さや、勤勉さに加え、ヨーロッパで生まれた楽器に日本の気候ができる修理を施そうとしてきた歴史の積み重ねもあるのではないかと思います。

また、気づかれた方もいると思いますが、上記の国名にイタリアは含まれません。イタリアにもいくつかの優秀な修理・修復工房はあるのですが、製作工房の多さに比べると決して多くはなく、また歴史的にみてもイタリアの楽器は諸外国に売られ、結果的に諸外国で修理や修復がより発達したという側面があるため、目立ちにくいのであえて載せませんでした。

ただ、このように書くと上記以外の国の修理工房の質が高くないと思われてしまうかも知れませんが、そのような意味ではありません。今日、イタリアに限らず世界各地で腕の良い製作家を見つけることができるのと同様に、世界各地で腕の良い修理人を見つけることもできるようになっています。

そうしたこととは別に、気候や社会環境の差から、ヨーロッパの方法が日本やアメリカでは通用しにくいことや、アメリカの方法が日本では通用しにくいことも珍しくはありません。

また、製作が伝統を掘り下げる側面が大きいのに対し、修理は日進月歩で、変化しています。より合理性が高く、よりよい結果を機能的にも、倫理的にも、また経済的にも得られる方法が常に追求されており、弦楽器技術者の集まるSNSではそうした方法に関する議論がかつてなく盛んです。話がだいぶ広がってしまいましたが、このような経緯から、当校で採用する修理方法は、国内の修理技術者の方々が磨いてきた方法に加え、日々世界の修理工房や更新され、模索されている方法を検証しながら取り入れることを心がけています。

私の学校の先輩で、ドイツ人ですが、イタリアに学び、イギリスの工房で修理・修復を手がけ、今はアメリカの工房に腕を買われて修理を続けているような人もいます。

皆さんもその気になれば、修理工房や、修理技術が必要とされている場所を渡り歩きながら、日本や世界中を巡ることもできると思います。また、地域に役立つ町医者のような存在として、地域に根をはることもできるでしょう。ぜひ、皆さんならではの道を見つけていただきたいと思っています。


日本は修理の需要が大変多いので、今後、「先輩の声」では、かつて共に学び、今は修理師として活躍する各地の先輩たちを少しずつ紹介していきたいと思います。

Print Friendly, PDF & Email