保護者の皆様へ

平素より当校の教育へ関心をお寄せいただき、誠にありがとうございます。

こちらでは認可専門学校ではない当校に通われることのメリット・デメリット等をご理解いただきたくために、ページを設けさせていただきました。

当校の教育方針、カリキュラム、募集要項等については別にページを設けさせていただいておりますので、合わせてお読みいただければ幸いです。

長文ではございますが、ぜひ、ご一読いただき、ご子息様、ご息女様の入学について、十分なお話合いをいただければ幸いです。


【許認可について】

当校は、文科省の認可する学校法人ではなくスクールとしての運営を行っております。

学校法人でないことの受講生の皆様から見たデメリットは、主に

①通学定期が使えない(定期券をご購入いただいた場合、通勤定期扱いになります)

②卒業により「専門士」の資格はとれない

という2点が大きく挙げられると考えております。

一方メリットとしては、

①既存の学校教育法にしばられない指導を提供できる

②資格がないことにより、有資格専門職に比べて競争が少ない仕事が実現できる

という点が挙げられます。

日本における認可専門学校として弦楽器の製作・修理技術を教える学校・学科は過去に設置が試みられたこともありましたが、2016年ごろより認可法人は実質的になくなっております。(※2017年当校調べ)

認可法人がなくなったことの理由としましては、法人を設置すること(そのために土地・建物等の所有を義務付けられること)が弦楽器製作・修理のように市場規模がさほど大きくない職業の場合には、運営者への負担が大きくなり過ぎることが原因と考えられます。

当校は比較的小さなスクールという形をとることで、永続的な運営を目標の一つとしました。また、開学にあたり、従来の専門学校が抱えていた時間的制約の克服を期し、3年制とした上で内容も見直しました。

一方で、上記の「専門士」の資格がとれないことが一般的にデメリットとして捉えられる点については、これまでの経験から、実際の就業とキャリア形成においてはそれが大きな障壁とはならないことは明言させていただくことができます。

むしろ資格があっても技術とよい人柄がなければ、仕事に入ることも、仕事を進めていくことも難しいものであるため、それらの修得と成長に皆様とともに取り組みたいと願っております。

【技術検定(資格)制度について】

弦楽器製作家・修理師は、国家資格としての技能検定が我が国においては未だ設置されておりません。

(2017年現在、楽器技術の国家資格として整備されているのはピアノ調律師のみです)

資格制度の不在は単に制度上の問題ではなく、他の楽器に比べヴァイオリン属の楽器が、歴史的に小さな工房でそれぞれ独自のスタイルを保ちながら入念に手をかけて作られてきたため、工業的な標準化・スタンダード化に基づく資格整備が難しいという背景もあったのではないかと推察します。

無資格の技術職であるということは、ご心配の要因になると思います。しかし、実際にはビジネスとして有資格業種を見ると、競合が少ないうちはよいのですが、資格制度があるゆえに就職までの道筋が誰にとっても明らかになってしまい、多くの場合、逆にマーケットが有資格者であふれて競争過多の状況を生むことが知られております。

換言しますと、これまでも弦楽器技術の特性である「資格制度がない」「認可校がない」ということが、逆説的にはマーケットへの新規参入障壁を高くし、規模は小さくとも比較的安定感のある職業として、この特殊な専門職を確立してきた面があると考えております。

また、あらゆる仕事の基本が「信頼」であると考えれば、資格を求めるよりも、信頼され、「この人に仕事を頼みたい」と思える人物に一人一人の卒業生が育ち、そのつながりの中で信頼のネットワークを形成していくことが何より大切なことと確信しております。

今日の社会では資格の有無以上に、コモディティ―化されにくく、AIなどの台頭に影響されにくく、かつ定年なく働ける職業としての性質を備えていることが、長い将来にわたって大事なことになるのではないかと考えております。

(※ドイツ語圏のみマイスター制度と呼ばれる国家資格制度が今日もあります。当校講師は海外への留学等の手引きついても経験があり、必要に応じ、見学会等でご説明させていただいております。)

【学生生活と教育モデルについて】

当校では、3か月ごとに面談を行い、受講生個別の体調・技術・生活管理に受講生と協働で努めてまいります。

保護者の皆様にご見学いただける機会も年に1~2度設け、ご案内させていただきます。

また当校は、

①卒業後の就業先として想定される現場・職場とのギャップをできるかぎり減らすことと、

②スクールの安定運営のために、代表者が運営する弦楽器工房を併設しており、

学びながら実際の楽器製作や修理の様子を間近で見ることができるようになっております。

これらのことからもご想像いただけますように当校は現場(工房勤め)と学校のちょうど間に位置するような教育モデルを築くことをヴィジョンとしております。

これは学校に通う皆様が、単なる受け身の学生ではなく、職場に出入りする一職業者としての立ち居振る舞いを最初から求められるということでもあり、そのためには社会人としての時間・約束の順守、服装、言葉遣い、表情などコミュニケーション全般の向上を強く求めて参ります。

【就職について】

弦楽器業界は、基本的にはこれまでも顕在的な求人がありません。これにより、ご子息・ご息女を送り出すことを不安に思われることは当然のことと思います。しかしながら、潜在的な求人は毎年のようにあり、また国内のみならず活躍の場は海外にも広がりつつあります。

顕在化した求人がない業界で職を得るには、ふだんから社会人として十分な力を養い、1人1人が周囲と自分自身に対するリーダーシップを発揮する必要があります。

常に自分から積極的に動くことは不可欠ですが、社会人として周囲から信頼を得られるふるまいと行動力を身につけ、技術と専門知識習得の研鑽に励み、積極的に就職活動を実践すれば、必ず道は開けるものと確信しております。これまでの先輩技術者の皆さんもそのようにして進んできました。

就職については、すでに10年以上にわたる実績がありますが、卒業生の就職先等は個人情報になるため、見学会等で直接お話をさせていただいております。

【災害時対応について】

台風・地震等の天災が発生した場合は、できるかぎり早くこちらのホームページおよびSNSに学校の対応を掲載させていただきます。災害時には、メール等が不通となることもしばしばありますので、ぜひこちらのホームページのお知らせ情報をご確認ください。また、必要に応じ、電話連絡をさせていただきます。


ご心配は尽きぬものと思いますが、もしもご子息・ご息女様ご自身に熱意があるのであれば、ぜひ一度ご一緒に当校をお訪ねいただければと思います。小さな工房教室のため、受け入れられる人数は限られておりますが、できるかぎり若い技術者の育成を後押ししていきたいと考えております。

すでにご子息・ご息女様が入学されました皆様には、引き続き当校の教育へのご理解とご支援を賜りたくこの場を借りてお願い申し上げます。

代表 髙倉匠

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