【コラム】ヴァイオリンの駒の位置

こんにちは、代表講師の髙倉です。

今日はネット上で興味深い写真を見つけたので、こちらでシェアしたいと思いました。

それは、イタリア・モデナ市にある昔の貴族エステ家の博物館に収蔵されている装飾ヴァイオリンの写真です。

私も15年以上前に現地で見たことがありますが、彫刻の技法はいつ見ても眼を見張るものがあります。しかし、当時から弦楽器製作家として気になっていたのは駒の位置です。

この楽器は写真で見ると分かるように、メンテナンスをされた際に、最近のスタンダードに準じて駒の位置が決められてしまっています。

しかし、装飾をよく見ると、本来駒が配置されるべき場所は、現在駒が立っている場所より少し下であったことが分かります。(昔はネックの長さが現代の標準と異なっていたので、今と駒の位置が違っていたことがしばしばありました)

このような間違いが生じてしまうのは、楽器をプロポーションではなく、本場イタリアでさえ、寸法のみで作るようになってしまったからではないかと思います。

寸法は便利なツールで、大いに用いるべものと思いますが、そのおおもととなるとプロポーションを理解しないと、各部の長さ、大きさがバラバラになってしまい、駒の位置も本来の位置を見失ってしまうということです。

残念ながら、プロポーションの勉強は海外のどのような学校でも、授業ではほとんどまじめに扱われませんが、それは後期ルネサンスに生まれた楽器を設計する上では、実はとても大事なことではないかと当校では考えています。

技術を身につける段階で、まだ設計の考えは必要ないかもしれませんが(最初は何事も模倣から始まるので)、もう一歩踏み込む段階になった時には設計はオリジナリティーのある楽器を作る上での大切な要素になりえます。

多くの学校で設計よりも、技術習得に重きが置かれるのは、昔のような設計方法が顧みられなくなったということと同時に、設計したものを再現する技術がなければ意味がないからということもあるかもしれません。

当校でもまずは技術習得に重きをおきます。その上でもし時期が来たら、昔の設計についても共に皆さんと勉強していければと思います。

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