【コラム】もしも仕事(学校)選びを間違ったら
- 2018.07.10
- 講師のコラム
こんにちは、代表講師の髙倉です。
「もしも仕事(学校)選びを間違ったら」ということについて書きたいと思います。
ほとんどの方が「本当にこの仕事を選んで大丈夫だろうか?」「本当に弦楽器技術者としてやっていけるだろうか」という思いを持ちながら、仕事選びをされると思います。
実際に私も10年以上に渡り指導をさせていただく中で、弦楽器技術者の道に入ったものの、自分の本当にやりたいことに気づき、よい意味で別の道を後から選んだ人たちも見てきました。
そのため、どれだけ覚悟をもって臨んでも、弦楽器技術者にならなかった時に方向転換がきくのかどうかということが現実的な問題として気になるということもよく分かります。
これについてはケースバイケースで、一言ではなかなか言えないのですが、一つ言えることは、「やってみたけど、自分が本当にやりたいことではなかった」と感じた場合でも、しっかりと2年間ないし3年間をやり通した人は弦楽器以外のことにも通じる仕事の力を身につけてきたということです。
私自身、弦楽器技術の習得を通して、他の全く違う仕事への取り組み方も大きく変わりました。
それは、技術力を向上させる過程で、
- (仕事の)精度が差を生むこと
- 精度と時間のバランスの大切さ
- 柔軟なアイデアの大切さ
- 段取り・優先順位・スケジューリングの大切さ
- 人間関係・コミュニケーションの大切さ
- 主体性を持って動き続けることの大切さ
- 戦略的・予防的に物事を動かすことの大切さ
- 美しいもの、美味しいものなどに日常的に接することの大切さ
- やり抜くことの大切さ
などなど、あらゆる仕事に共通する大切な基礎が少しずつ磨かれてきたからだと思います。
さて、いったん弦楽器技術の道に入ったものの、まだ全部を見ないうちに、途中でやめて方向転換をしようとする人が時々います。しかし、考えていただきたいのは、そのような選択をすると「やると決めたのにやらないで途中でやめてしまうというキャリア」だけが残ってしまうことです。
どんなことであれ、自分でやると言ってはじめたことを途中でやめてしまうような人を企業や工房は採用したいと思うでしょうか?
仕事というものは目標を掲げていったん始めたならば、必ず最後までやり遂げなければならないことが常です。それができる人を、どのような職種のどのような会社や工房でも求めているのです。そうであれば、途中で自分の思っていたものと違うと言って、やめてしまうことは何の足しにもならないということは冷静に考えると分かるはずです。
このようなことから、入学前によくよく考えてから踏み込んで、それでも「これは自分の考えていたものとは違う」と感じた場合にも、まずやり切るということを当校では強く勧めています。特に年齢が若ければ若い人ほど、まず何よりも1つのことを完遂したというキャリアが大切になると思うからです。
また、そうすることで、一見遠回りかもしれませんが、
- やると決めたことはやりきる力があることを示せる
- やりきったという小さな経験が次に選ぶ分野でも大きな支えと自信になる
- 時によっては、「間違った判断をした」ということを受けとめることにより、次に選ぶ仕事選びにいっそう慎重になり、判断力自体が磨かれる
という一層大きなメリットがあると考えるからです。
中途半端であることが何も生まないのは、どのような分野のどのような仕事にも共通することです。
人間なので、判断の間違えはつきものです。また、何かで成果を出している人が、他の人よりも失敗が少ないということもありません。「仕事選びを間違った」ということが分かった時こそ、実はその人の本当の判断力が問われ、また生かせる場面であると思います。
こちらを読んでくださっている皆さんが、どのような選択をするにせよ、一つのことをやり切ることで、またそのことを通して次のよいステップに進んで下さることを心から願っています。
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