入門者のための道具紹介〜鉋(かんな)

今日は、カンナを紹介させていただきます。

鉋(かんな)という道具の名前は、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

この道具も、先に取り上げたナイフと同じぐらいヴァイオリン製作と修理によく使われるものですが、鉋は木材を切る「刃」と、その刃を支える「台」で構成されており、昔から「鉋は台で切る」と言われるように台の調整がとても大事な道具です。

台の調整には根気がいりますが、ひとたび台が整うと、魔法のような威力を発揮する道具です。ヴァイオリン製作学校では一番最初にこの鉋台の調整を学びます。鉋の魔法がいかほどのものか、ぜひ皆さん自身の手で確かめていただければと思います。

さて、写真の鉋は、いわゆる西洋鉋で、木の台でできた和鉋とは異なるので、皆さんも見慣れないかもしれません。西洋鉋と和鉋の大きな違いは、西洋鉋が押して切るのに対し、和鉋は引いて切ります。

学校では西洋鉋を主に使うので、ここではそちらに話を絞りますが、写真のサイズの鉋(刃幅は通常35~40mm程度)の手のひらにおさまって、片手でも使えるようなサイズのものはblock plane(ブロックプレーン・英)などと呼ばれる小型の鉋です。本来の西洋における鉋はもう少し大きいサイズのものを指します。どちらも仕事には使えますが、用途の汎用性を考えるとブロックプレーンが便利です。余裕ができて鉋をそろえられるようになれば、普通のサイズの鉋(西洋のものでも木の台のものと、金属の台のものがあります)を揃えていってもよいのではないでしょうか。

ブロックプレーンを販売しているところはさまざまありますが、実は手ごろな価格の質の良いブロックブレーンが見つからないというのが最近の問題です。筆者が試してきた中では、最近はドイツのDictum社のブロックプレーンが台の堅牢さ、刃の質などと価格の面で比較的バランスがとれています。Dictum社は道具通販の会社なので、他にも様々な楽器のための道具が見つかるので、ぜひこちらもチェックしてみてください。Dictum のオリジナルのブロックプレーンは刃幅が35mm程度です。

Dictum

https://www.dictum.com/en/

ほかには、カナダのメーカーでLeevalley というところが、Veritas という鉋のシリーズを出しており、こちらは少し値段は高いものの刃幅が40mmあることから使う人も多くいます。

http://www.leevalley.com/us/Home.aspx

あとは、高級なブロックプレーンを打っているところとしては、Lie-nielsen というアメリカのメーカーがStanley というメーカーのカンナの質の良い復刻をしていますが残念ながら、刃幅40mmのブロックプレーンはありません。

https://www.lie-nielsen.com/

 

ちなみに写真の鉋は、アメリカの大工道具を専門としているWoodcraft 社が出しているもので、やはりStanleyの鉋を復刻したものです。刃幅が40mmありますが、台が長めで、たいていの人にはやや重く感じられると思います。

Woodcraft

https://www.dictum.com/en/

ほかにも個人のメーカーを含めるとたくさんのメーカーが最近は見つかりますので、調べてみてください。

刃幅が40mmあり、台が堅牢で、かつあまり重すぎないブロックプレーンが見つかるとよいと思います。

 

刃の質では、よい和鉋の刃にかなう西洋鉋は今のところありません。全体的な構造的な違いや、刃の造り方の違いもあり、やはり刃の切れ味、硬さ、付き具合ではよい和鉋にはかなわないのですが、それでも西洋鉋を使うのは、道具の使い方、手に伝わる感触などが、どうしても楽器の様式美や楽器の仕上げ方に感覚的な影響を及ぼすためではないかと思います。

襖や障子は日本の建築の美しさですが、それと同じ感覚ではヴァイオリンは作れない場合があるからです。

 

 

 

 

 

 

※写真は、学校支給の鉋とは異なります。

Print Friendly, PDF & Email