入門者のための道具紹介〜砥石(といし)
- 2018.06.30
- 入門者のための道具紹介
今日は、これまでに紹介してきたナイフ、鉋(かんな)、平鑿(ひらのみ)、丸鑿(まるのみ)、などを使えるようにするために必要な道具である砥石(といし)の紹介をしたいと思います。
砥石は文字通り、刃物を研ぐための石です。日本では永く自然の山から採掘される天然の砥石を使う歴史がありましたが、近年では人造砥石と呼ばれる人工的に作られた砥石も多く用いられるようになってきました。
弦楽器の製作・修理の現場でも砥石のない工房はないと思います。それはからです。これは木工にかかわる分野の職人さんならどこでも同じかもしれません。
これまで学校でも様々な砥石を試してきました。メーカーの名前や砥石の種類を上げれば切りがないのですが、その中でも皆さんが最初に買うのに適した砥石が何かと問われれば、上の写真にあげた砥石をお勧めしています。
1つは写真の右から2つ目の赤い煉瓦のような砥石で、こちらはキング砥石株式会社の#1000(1000番)という砥石です。この砥石は中砥(なかと)と呼ばれ、刃物を研ぐときには最初に使われることが多いです。この砥石で面を整え、もう一つの仕上げ砥石で、刃を仕上げて研ぎます。キングの砥石はいろいろなことで売られており、皆さんの身近なホームセンターでも買うことができると思います。#1000がない場合は、#800や#1200でもほとんど同じように使えます。
もう一つお勧めしたいのが、天然の仕上げ砥石です。こちらは天然のものなので、採掘される山や地層によって様々な名称と違いがあるのですが、一般的に合砥(あわせど)とも呼ばれます。天然の砥石については、書き始めてしまうとそれだけで日が暮れてしまうので、こちらには書きませんが、興味のある方はネットでいろいろと調べてみてください。ただ、一つ言えることは使ってみないと分からないということです。写真の中で木の台をつけた灰色の大きな砥石が天然砥石です。
基本的にはこの2つでほとんと用が足ります。
これに付け加えるとすると、3つほどあるのですが、1つは写真にある網目状の模様がついた人造のダイヤモンド砥石です。これは#150のもので、裏側に#600の面があるのですが、刃物の刃先が欠けてしまったときなどに素早く刃を修正するために便利です。
もう一つ写真にある小さな砥石は先に説明した天然砥と同じもんですが、「こっぱ」と呼ばれる採掘時に出た小片で、きちんと整形された砥石ではありません。しかし、弦楽器製作で使う刃物は小さいものが多いので、初心者の段階で高価な砥石が買えない場合にも、同じ品質でありながら価格的にも手ごろな「こっぱ」は大変重宝します。
最後の1つは写真にはありませんが、名倉砥石(なぐらといし)と呼ばれるものです。こちらも様々な種類があり、天然のものから人工のものまでありますが、この砥石は実は刃物を研ぐためではなく、砥石の面を再生させるための砥石です。
砥石も刃物と同様によい砥石を探して調べていくとほとんど切りがないのですが、実用性の観点から言えば、①キング砥石の中砥と②天然の仕上げ砥石、③修正用の荒砥(あらと:ダイヤモンド砥石などのこと)、④名倉砥石があれば仕事をすることはできます。それ以外のものはあれば助かるという範囲で必ずしも絶対必要ではありません。
このコーナーでは、これから技術を習得していきたいという入門者向けに書いていますので、さらに必要最低限ということであれば、①キング砥石の中砥と②天然の仕上げ砥石だけでもよいです。
①の中砥は様々な製法で作られたものが市販されていますが、総合的に見てキングをお勧めしています。
②については、ネット販売やヤフー・オークションなどでも探すことができますが、最初は信頼できる刃物屋さんや砥石屋さんに行って、話を聞いて買ってみることをお勧めします。
写真の合砥は東京の三軒茶屋にある土田刃物店さんで購入させていただいたものですが、砥石の見方なども詳しく教えていただきました。皆さんの身近にも信頼できる刃物屋さんや砥石屋さんがあると思います(日本ならではのことです!)ので、ぜひ調べてみてください。このような小さなことでもゼロから始めて積み重ねていくことで、いつか皆さんが世界に出て活躍したり、若い人に教える機会をもつときには貴重な経験となっていくと思いますので、ぜひ今から調べてみてください。
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