FAQ
こちらのページでは、よくある質問を順次追加し、お答えしていきます。
※質問への返答は、適宜修正を加える場合がありますことを予めご承知おきください。
Q:リペア(Repair)とは修理のことですか?Restorationという言葉も修理ですか?
A:リペアは日本語に直すと修理、Restorationは日本語にすると「修復」という言葉がふさわしいと思います。Restoration (修復)の意味合いとしては、弦楽器業界では慣習的に「難しい修理、難易度の高い修理、復元を伴う修理」などで意味で使われることがこれまでは多くありました。
ただ、近年は美術品の修復分野からの影響で「修復」は単に「難しい修理」や「復元と伴う修理」ではなく、希少性の高い文化財を扱う上でのモラルを反映させた言葉として、使われるように変わってきています。
そのため、20年ほど前まではRestoration (修復=復元を伴う難しい高度な修理)とされていたことが、今日ではその内容やプロセスと結果によっては単なるRepair(修理)であると考えることも増えてきました。
弦楽器専門店でもまだこの辺りの言葉は混在して区別されずに使われているので、一般の方から見ると非常にわかりにくいと思います。学校では、修理と修復を意識的に区別したり、逆に意識的に混在させながら、実際の作業を行うことを心がけており、単なる作業ではなく、道具でありながら文化財でもあり、また演奏家にとっては一心同体である弦楽器を大切に扱う姿勢を身に着けてもらいたいと考えています。
Q:ヴァイオリン職人になるには、イタリア語やドイツ語を勉強しないといけませんか?
A:言語はたくさんできるに越したことはありませんが、いちばん大事な外国語は今は、英語だと言えます。弦楽器の歴史はイタリア、ドイツ、フランス、スペイン、東欧諸国などに深く関わってはいますし、それらの国々の言葉を理解できれば助けにはなりますが、今はあらゆる専門書に英語が併記されていると言っても過言ではありません。また、最初から英語で書かれるケースも珍しくありません。
また英語と言っても、中学校レベルの英語力があれば、あとは辞書を引きながら読みこなしていけるものばかりです。
また、古い、英語が併記されていない文献などにあたる場合でも、最近は格安で英語翻訳を引き受けてくれるようなシステムがあったりもします。
国際的な商業フェアなどに行っても使われるのはもっぱら英語で、それもネイティブではない人たちが「通じればよい」とばかりに使っているので、私たち日本人がカタコトで話してもまったく問題ありません(!)。
当校では英語に慣れるために、一部の授業を英語で行いますが、それも正しい英語を身につけるためではなく、「これで通じるのだ」という感覚を身につけてもらうためです。まずは英語に取り組み、もしも留学を検討されるのであれば、他の言葉も勉強しましょう。
代表講師はベルギー(フランス語圏)、イタリア、ドイツなどに住んだ経験があり、良い意味で言葉は適当でよいということを熟知していますので、ぜひこわがらずに飛び込んで楽しんでみてもらいたいと思います。
Q:海外の学校と日本の学校の違いはどのようなところにありますか?
A:海外のヴァイオリン製作学校は、世界各地にありますが、ほとんどの学校が基本的にその学校のある国のために必要とされている技術を標準として学校が形作られているという点がまずあります。
たとえば、イタリアでは基本的には楽器を製作し、それを自国内で販売・演奏・修理するよりも、アジアやアメリカなどに販売することが多いので、学校の中心的な講義科目も「楽器製作」になります。ドイツでも学校に関してはその事情はあまり変わりませんが、家内制工業をベースとしきた伝統的な教育(楽器製造)システムに加え、国立の学校では近年最新の設備・機器を導入し、授業の変革を図っています。(ドイツの国立の学校ではドイツ国籍を持つ人が最優先されるため、イタリアの学校に比べると外国人枠が非常に限られており、その中でアジア人が入れる門戸はさらに限られてきたという現状はあります。)
こうした現状は、イギリスやアメリカなどの学校でも基本的には変わらないと考えていただいてよいと思うのですが、どこの国もそれぞれの国の言語で基本的には授業が行われています。
日本のようにたとえばイタリアに比べてもプロからアマチュアまでの演奏人口の多い国では、ふだんの仕事としては、楽器製作以上に楽器のメンテナンス・調整・修理が多くなる傾向があります。またヨーロッパと日本では気候条件がかなり違いますので、日本であれば、日本の気候条件に合わせた修理やメンテナンスが必要になってきます。日本の本州の気候は実はヨーロッパよりもアメリカの東海岸などの気候に似ているため、アメリカで発達した修理方法などが役に立つケースが実はあるのですが、ヨーロッパの学校で学んだ修理方法が日本では残念ながらそのままでは役に立たないケースもあります。
このようにしてみると、非常に大雑把な言い方にはなりますが、イタリアの学校はイタリアを拠点に働く人のために考えて設計されており、ドイツの学校はドイツを拠点に働く人のために、日本の学校は日本で仕事をしていくことを想定したつくりになっているということは言えると思います。
そのため、当校の講師から過去に学んでくださった方々も、将来的には(途中で一時的に留学をしたとしても)日本を拠点に活躍したいという方がほとんどでした。そのため、まず日本で必要とされる商習慣や技術を当校で学ばれてから、さらに製作を仕事のメインにしたい(あるいはそれができるという感触を得た)方が留学をするということが多く見られました。また、日本語で最初の基礎を学べることから、一般的には技術修得のスピードは早くなるということは言えます。イタリアの学校の4年目と同程度の技術レベルを日本での2年間で修得できてしまうことは珍しくありません。そのため、当校での学びを終えた後では、留学は基礎技術を学ぶためというよりも、製作スタイルとしての文化を学び、吸収していただくものとしてプランが作れると考えています。
留学については、過去の実績からそのステップや方法や、メリット・デメリットについて見学会などでより詳しくお話をさせていただいていますので、ぜひお声がけください。
Q:海外の学校は学費がかからないと聞きますが、日本の学校に通うメリットはどのような点にありますか?
A:確かに海外の公立校においては、国や自治体の補助によって学費が非常に安いところかがいくつかあります。具体的にはイタリアとドイツの国公立専門学校などがそれにあたります。費用という点では渡航費、生活費、勉強のための材料や道具の出費だけを考えればよいので比較的安価に済む可能性はあります。
一方で、日本では国公立の学校で弦楽器の技術を教える学校はありませんので、学費がかかってしまうという点はあります。その中で、日本で学ぶメリットがあるとすれば、①技術修得のスピード、②商習慣および国内に必要とされる技術の確実な修得、③キャリアの俯瞰ができ就業しやすい、④国内の楽器店・技術者とのつながりと仕事作りなどが挙げられると思います。
このうち①は比較的わかりやすいと思いますが、②~④は少し詳しくお話しないとわかりにくいと思いますので、また改めて加筆させていただきます。
Q:人付き合いが苦手なので職人になろうと思いますが、営業の仕事もしなければなりませんか?
A:厳しい言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、人付き合いを避けたいから、楽器に向き合う職人になりたいという方には、弦楽器技術者の仕事は向いていません。
皆さんかこれまでどれだけの人と付き合ってきたか、どのようなよい友人がいるか、今周りにいる人たちと気持ちよく付き合うことができているかということは、実は技術の習熟度大きな相関関係があります。
なぜそうなのかというのはよくわかりませんが、技術の習熟が進む人は、必ず周囲の人たちとよい関係を築ける力をまず持っています。
そのため技術修得に専念するためにも、まずは今ある場で周囲の方々とよい関係を築いておいて下さい。
営業の仕事があるかどうかという点については、あると断言できます。弦楽器製作家は、仕入れ、製作、販売営業のすべてを行います。
Q:現在高校生(中学生)ですが、高校を卒業したら弦楽器技術者になりたいと思います。今からどのような勉強をしておけばいいですか?
A:仕事を始める前には想像が難しいかもしれませんが、社会に出て仕事をすると、同業者や演奏家の方だけでなく、非常に広い範囲の人たちと一緒に仕事をすることになります。
そして、そのようなまったく違った分野の友人からたくさんのアイデアをもらうことも珍しくありません。
また仕事がら外国の人に接することや、海外に行くことも増えます。
そのため、高校を卒業するまでするべきことがあるとするとまったく違う進路に進むかも知れない周りの友人たちと仲良く、人生の中で長いつながりを持てるように誠実に付き合っておくことがもっとも大事だと思います。
また、身の回りに日本ならではの文化や伝統のあるものを見つけてはその習得に励むの良いことです。茶道、書道、武道など、または様々な工芸など日本には無数の素晴らしい文化があります。このような一見無関係と思われることを見つけて取り込んでおくことが、長い目で見たときには、皆さんの技術者としての個性をかけがえのないものにしてくれます。
Q:音大で学んできましたが、技術者の道を目指すことはできますか?
A:結論からお話しすると、個々人の力量と判断力により、できる場合もあれば、そうでない場合もあります。
演奏経験は必ず技術者としての仕事に役立ちますが、技術者としての仕事には演奏家には全くない要素もたくさん含まれます。技術という点では、まったく別の仕事であると捉えていただいてもよいぐらいです。
また、演奏が今のようにできるようになるまで皆さんがどれだけの時間をかけてきたかということを考えていただければ分かりますが、木工などの技術の習得にも同じだけの労力と時間はかかるものです。
技術を習得しようとすると、絶対的に必要な時間があります。その時間を確保するためには演奏の練習時間をこれまで通りに確保することは難しい場合もあります。
なぜこのことをお話しするかというと、演奏ができる方ほど、演奏練習をしないことに慣れるのが難しいからです。そのため技術学校に入っても演奏練習を今まで通りに沢山続けてしまい、技術修得の時間が不足し、どっちつかずになってしまうケースが残念ながらあります。
何の専門家になるのか、自分自身ほど演奏能力を持つ人は大勢いるのではないかということを自問し、何に時間を割くべきかよく考えて行動されれば、これまでの演奏経験も大いに役立ち、よい成果に結びつくと思います。
Q:演奏はできなければヴァイオリン製作はできませんか?
A:非常に難しく、またよい質問だと思います。当校ではすべての技術者を目指す方が演奏の練習をすべきと考えています。しかしながら、演奏ができなければ技術者になれないとは考えておりません。
弦楽器の技術者は、ヴァイオリンだけでなく、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、そして場合によってはそれ以外の擦弦楽器の修理調整を手掛けることもありますが、すべての楽器の演奏に精通している技術者はまず見かけません。一方で、演奏はできなくとも、よい修理や調整をほどこし、またよい楽器を作ることができる技術者がいることは事実です。
演奏はできるにこしたことはありませんが、音を先入観なくあるがままに聞き分け、初歩的な運弓ができ楽器の状態をチェックすることができれば、まず技術者の仕事をしていくことはできると言えます。
逆に演奏ができる場合の注意点として、演奏の技量が楽器作りや楽器調整の上限を決めてしまうようなケースを見ることが少なくありません。これは演奏ができる人ほど、自分の演奏と感性で楽器や状態を判断しようとするためではないかと思われます。そのため、演奏ができたとしても、技術者としては自分の演奏を少し離れたところから見て、楽器や作業に向き合う姿勢は求められると考えています。
Q:ヴァイオリン製作学校への基本となる入学年齢上限を35歳までとし、36歳以上は「修了」としているのはなぜですか?
A:弦楽器製作家、修理士などの技術者になるには相応の時間がかかりますが、これまでの指導経験に基づき36歳以上からこの仕事に挑戦をされたい方は、それまでに培ったキャリアを保ちながら、パラレルキャリア、ダブルキャリア、デュアルキャリアと呼ばれるような仕事の形で構築していただく方が、現実的であると考えたためです。
また、就学期間も含め一通りの仕事を覚えるまでに10年ほどを要しますので、一般的に40歳前後で老眼が始まることなど、身体的な意味で克服しなければならない課題が出てくることを考えると、それまでに身体で作業を覚えておかなければならない面が大きい仕事であることから、専業として技術者の仕事に挑めるのは30代前半までと考えました。
ただし、丁寧な仕事ができる方であれば、36歳以降であっても、それまでのキャリア×定年がない仕事としての弦楽器技術者というキャリアをうまく組み合わせて仕事を構築することを考えていただける可能性は十分にあると思います。
実際にこれまで、40代、50代の方でも驚くほどの成果を示された方もおられます。年齢の高い方は、それまでに培った仕事の仕方が如実に反映されるということも感じてきました。年齢に関わらず、ぜひ挑戦をしていただければと思います。
Q:ヴァイオリン製作学校を卒業して就職はできますか?
A:当校は2019年に開学をするため、安易にここでお答えをすることはできませんが、これまでの実績から、しっかりと技術とコミュニケーション能力を修得し、社会人としての見識を身につければ、就職はまずできると言えます。
またこれまで、指導のもとで学んでくれた人たちがどのようなステップを得て現在の仕事にそれぞれついているかということをお話することはできますが、この点については、具体例をあげると非常に情報量が多くなってしまうため、また個人情報にかかわる部分もあるため、見学にいらした際に説明させていただきます。
Q:手先が器用でないとヴァイオリン製作・修理技術者にはなれませんか?
A:この道に入られるほとんどの方は、入学前から、いろいろなものを手作りするのが好きであったり、音楽が好きでなおかつ美術や工作に自分が向いていると感じてこられた方が多いのは事実です。逆に、これまでのご自身の経験から、自分は物作りが下手だともしも感じておられるのであれば、確かに技術仕事は苦労をすることになるかもしれません。
しかしながら、手先の器用不器用以上に、どちらかというと特に初期の基礎技術の修得段階をあきらめずに乗り越えられるかどうかということの方が技術者として進んでいけるかどうかを左右する大事な要素なので、ほとんどの場合は器用不器用ということは問題になりません。
むしろ器用貧乏という言葉あるように、ある一定のレベルまでは簡単にこなせてしまう人ほど、その後長く続かないということも多く見られるので、器用不器用にかかわらず、地道な作業を続けていけるかどうかの方が問われると思います。
Q:ヴァイオリン製作学校の就学(修業)中、アルバイトはできますか?
A:アルバイトは禁止していません。
ただし、度を越して、ふだんの作業に影響がでるようなアルバイトは避けていただいています。それができない場合は、周囲の級友への影響も出るため、退学をお勧めすることもあります。
アルバイトが必要なのは資金面に課題がある場合がほとんどですが、保護者の方などに頼ることを申し訳ない・恥ずかしいと思って、アルバイトにいそしんでしまうケースも少なくありません。もしも保護者に頼れる状況にあるのであれば、しっかりと頼ってそのかわりにしっかりとした考えと技術とコミュニケーション能力を身に着け、高めることに全力を注いでいただいた方がよいと思います。
また、過度なアルバイトをしなければならないような場合は、入学をお勧めできません。非常に多くの時間をアルバイトに割かなければならないような場合は、入学は延期し、まずは入学前ある程度の資金をためることに専念をしていただいた方がよいと思います。
当校はよくできた楽器については学校の名前で、学校の工房製楽器として楽器を販売することを認めています(※詳細は募集要項を参照)ので、ぜひそこに力を注いでいただきたいと思います。
FAQは皆様からいただいた質問をもとに、今後も随時追加をしてまいります。